英EU離脱へ、金融市場混乱 関係者の見方

英国のEU離脱が決定しましたが、まだ消化不良のためか市場関係者の見方もまた様々です(※1)。取り合えず、下手に動かないに限ります。狼狽するのが一番いけません。

よく考えると、英国がEUを離脱しても英国自体が消滅するわけではありませんし、また日米への直接的なマイナス的影響は大きくはありませんので、マーケットが過剰に反応するほどには心配しなくても良いような感じがします。

むしろ、ここで予想外に株価が下げるのであれば、買い増しも不可ではありません。そのために、前々から注意深く現金ポジションを多めにしていましたので、値ごろ感の良いものは買いも入れる予定で、当面はマーケットの動きを眺めることにしたいと思います。動きが正常化すればそれもよし、想定外に崩れればそれもまたよし、といったところです。

もちろん、現在の当室のポジションがゼロではありませんので、下げれば含み損が出ることは自明ですが、それもまた許容範囲として受けることとします。


[以下、引用]
◆(※1)英EU離脱へ、金融市場混乱 関係者の見方

2016/6/24 15:33日本経済新聞 電子版

世界が固唾を飲んで見守った英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票は、離脱派が多数となった。EU離脱をリスクシナリオとしてきた欧米ヘッジファンドなどの市場参加者は、離脱派優勢が濃厚となるとポンド売り、ユーロ売りにかじを切り、経常黒字国の通貨でマネー収縮時に選好されやすい円を買い進めた。日本時間早朝に1ドル=106円台後半まで下げた円相場はその後急伸し、11時すぎに99円ちょうど近辺と2013年11月以来、約2年7カ月ぶりの高値を付けた。日経平均株価は約1300円下げ、1万5000円を割り込んだ。今後の見通しなどについて、市場関係者に聞いた。

【英・欧州経済】

「英は景気後退の可能性、EUとの貿易交渉厳しく」

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフ英国エコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏

英国の有権者はEU離脱、Brexit(ブレグジット)を選択したが、これは世界的に予期しない結果を伴う経済的な「自傷行為」に等しい。

ドイツなど欧州大陸の主要国と迅速な交渉ができない限り、英国は景気後退に陥る可能性が捨てきれない。企業は投資資金を引き揚げ、英国の信用リスクは高まり、英ポンド安で輸入品の価格が上昇する。家計は圧迫されるだろう。英国が一夜にして単一市場のメリットを失うことはないが、EUとの貿易交渉は厳しいものになるだろう。

欧州市場が開けば、今年の政策金利のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)から算出する利下げの確率は昨日の25%から50%程度に上昇しているだろう。英中央銀行による一段の景気刺激策は避けられない。


「EU離脱は英国民の生活に悪影響、欧州経済も成長鈍化」

IHSグローバルインサイトのチーフエコノミスト、ハワード・アーチャー氏

EU離脱は英国経済にとって悪いニュースだ。離脱キャンペーンの支持者でさえ、企業や消費活動に不確実性が高まることから経済への打撃があると認めていた。ポンドが対ドルでおよそ30年ぶりの水準に下落するなど、金融市場の反応をみる限り、短期的には英国にとって悪い決定だとみている。

経済や政治の不確実性は相当の期間、国民生活に影響を及ぼす可能性が高い。企業投資や雇用、消費者支出を押し下げ、企業や家計の心理面を圧迫するだろう。住宅市場が著しく低迷することも想定され、資産市場の弱体化と信用環境がタイト化することでさらに英国の成長が阻害されそうだ。英国への投資は、直接投資も証券投資もいずれも厳しいものになることが予想される。ポンドが急落しており、これは英国の輸出を後押しするものだが、消費者の購買力を圧迫し、企業の投入コストを上昇させインフレ率を押し上げることになる。ポンド安にもかかわらず、英国の輸出は伸び悩み、欧州経済全体の成長を減退させるだろう。

イングランド銀行(英中央銀行)は年0.5%の政策金利を0.25%に引き下げるとみる。量的金融緩和の復活も見通す。金融政策委員会はポンド安によるインフレ率の上昇に備えなければならない。


「EU離脱のドミノ倒しを懸念」

菅野泰夫・大和総研ロンドンリサーチセンターシニアエコノミスト

英国のEU離脱派勝利は予想外だった。地域によって投票率のばらつきがあるが、大票田だったスコットランドやロンドンが大雨になった影響が大きい。今後の動きとしてはキャメロン首相がきょうまたは来週の28~29日のEU首脳会議で離脱の通告をするだろう。

他のEU加盟国にも離脱の動きがドミノ的に波及する可能性が高まっている点が大きな懸念だ。EU離脱の連鎖が続くようだと、統一通貨ユーロの信認が一段と失われてしまう。長期的な世界経済の重荷となりかねない。まず目先は26日にはスペインで総選挙が実施される。EUとして今後どのように調整していくかが注目している。

英国ではまず不動産価格に影響が出る。商業不動産などで投資解除が始まり、一斉に投げ売りが始まるだろう。企業の英国離れも始まる。英国以外の投資家の損失も大きくなる。EU経済圏へのインパクトはこれからじわり広がってしまうだろう。

【円】

「円は95円まで上昇余地、米利上げに壁」

山口曜一郎・三井住友銀行市場営業統括部ヘッド・オブ・リサーチ

英EU離脱派が多数となったことで、世界経済と国際金融市場の先行き不透明感が高まり、「低リスク」とされる円には買いが入りやすい。一時的には1ドル=100円を大きく超え、95円程度まで上昇する余地があるとみている。

ただ円高は一筋縄ではいきそうにない。英ポンドが対ドルで急落し一時1ポンド=1.3475ドル前後と1985年以来の安値を付けるなど、ドル高の圧力も出ている。対円でもドルの支えになる。リスク回避の円買いが一巡した後に利益確定などの円売り・ドル買いが広がり、円は1ドル=103~104円程度まで調整しておかしくない。

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、Brexitを「利上げ見送りの理由の1つ」としていた。離脱が決まったことで米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の悪化が意識され、利上げが一段と遅れる公算が大きい。

次の焦点は日米通貨当局の出方だ。1ドル=100円超えの水準では米財務省も円高懸念を日本の財務省と共有できるかもしれない。日本政府が「実弾」の円売り介入をせずとも、米財務省が円高警戒の構えに変われば円売りが出やすくなる。


「円100円超え定着か、協調介入ならムード転換」

内田稔・三菱東京UFJ銀行チーフアナリスト

外国為替市場では典型的な「リスク回避」の動きが出た。低リスク通貨の円と基軸通貨のドルがともに買われ、欧州通貨は売られている。とりわけ円には買いが集まりやすく、クロス円(ドル以外の通貨に対する円相場)では円高が止まらない状況だ。

外為市場ではもともと、緩やかな米利上げ観測などから円高・ドル安基調が続いてきた。日本の実質金利(名目金利からインフレ率を差し引いた値)の上昇も円買いを促す要因となった。英国の欧州連合(EU)離脱がこうした円高・ドル安の構図を強めている。

各国のインフレ率の違いなどから為替相場の妥当な水準を示す「購買力平価」でみると、国際通貨基金(IMF)が算出する1ドル=103円に近いレートにある。もし世界経済が低迷し、米国の物価上昇率が利上げを正当化できない水準になると円はさらに上昇しておかしくない。円相場は100円を下回る水準に定着していくと考えている。

焦点は日本政府・日銀の為替介入だが、単に円高を理由とした介入は米国などの理解を得にくい。ただ協調介入となれば話は変わってくる。日米欧が英ポンドを支える目的の介入に踏み切るとなれば市場は好感し、リスク回避の円高に歯止めがかかるかもしれない。


「当局の為替介入も正当化される、円安基調は遠く」

大西知生・ドイツ証券外国為替営業部長

英のEU離脱が濃厚となった段階で、英ポンドやユーロが急落し、円は急伸した。英国がEUに残留するとの楽観的な見方も広がっていただけに、リスク回避の動きが一気に強まり、「低リスク通貨」の代表格である円買いが増えた。円高のペースは速すぎる。日本政府・日銀による為替介入が正当化されておかしくない水準と言える。

米国は世界経済の動きを慎重に見極めながら金融政策を進める構えを示している。英国がEUを離脱すれば世界経済に対する不安感は一段と強まり、利上げには踏み切りにくくなるだろう。円安・ドル高基調には戻りにくい。

【株式】

「株式市場で円高リスク高まる、日銀臨時会合も」

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト

利上げ時期を巡る米国の金融政策に、英国のEU離脱が加わり、円高のリスクが高まった。東京株式市場にも先行き不透明感が強まり、リスク資産を避けようとする売り圧力が高まりそうだ。

今後は相場急変の余波が残り株式相場が一段安したり円相場が上昇したりする局面があるかもしれないが、新たな展開に市場の関心は移る。英国のEU離脱交渉の行方や残留派を率いるキャメロン首相が辞任し新たな指導者の政治方針などが注目される。その内容次第では相場は反転するかもしれない。国内では株安・円高の流れを変えるには、政府による為替介入や、日銀のドル資金供給といった政策対応も期待される。日銀のドル資金供給は現行の枠組みでも可能だが、細かい対応をするために臨時会合を開く可能性もあるだろう。


「株式には短期の売りが加速、週明けも荒い展開」

杉原龍馬・ソシエテジェネラル証券株式営業部長

日経平均株価の大幅安を主導したのは、国内外のヘッジファンドをはじめとする短期筋の売りとみている。株式市場全般に変動率が高まり、中長期の機関投資家は動くに動けない状況だろう。

予想に反して英国のEU離脱派が多数となり、日経平均先物が急落してサーキットブレーカー(売買の一時停止)が発動された。これを受けて日経平均株価はその後やや下げ渋る動きもみせたが、先行き不透明感は強く、下値メドは見通せないのが現状だ。日本時間今晩の欧米市場でリスク回避の売りが広がれば、日本株は週明け以降も値動きの荒い展開が続きそうだ。

【長期金利】

「国内金利は一段と低下、各国中銀の対応に関心」

野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジスト

英EU離脱によるリスク回避の動きが世界的に広まり、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは向こう2~3カ月間でマイナス0.4%程度まで下落(価格は上昇)する公算が大きい。

現時点では信用収縮の度合いが読みづらく、年初に「中国ショック」が広がったように、短期的には市場で動揺が広がるだろう。各国の中央銀行の対応に関心が集まり、日本では日銀が早期に追加緩和に踏み切るとの見方が一段と増えそうだ。追加緩和の内容についても従来の想定から強まる可能性が高い。現在0.1%のマイナス金利幅を0.2%に広げるとみていたが、0.3%超に広げる公算が大きい。こうした見方が市場でも広がり、金利はしばらく低下傾向が続くだろう。

もっとも、実際には英国のEUからの離脱が日本経済に直接与える影響は限られるとみている。影響が深刻でないとの見方が定着すれば、次第に金利は上昇に転じるとみている。ドル・円のベーシススワップの拡大がいつ止まるかが、長期金利の基調の転換を見極めるうえで重要になる。


「国内長期金利はマイナス0.3%台への低下うかがう」

岩下真理・SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミスト

英国の欧州連合(EU)離脱派勝利で、リスク回避の円高・株安が進んだだけでなく「安全資産」とされる日本国債にも買いが入りやすくなっている。長期金利の指標である新発10年物国債の利回りは一時、マイナス0.215%と過去最低を更新した。債券市場にはさらに資金が流入する余地がありそうだ。

金融市場が混乱すれば各国の金融当局は何らかの対応策を打ち出さざるを得ない。日本ではこのところ様子見を続けてきた日銀がいよいよ追加の金融緩和政策に踏み切る可能性が意識される。長期金利はマイナス0.3%台への低下をにらむ展開になりそうだ。

【アジア】

「アジア株式市場は米利上げによる資金流出を懸念」

シンガポールのヘッジファンド、RVキャピタルの最高執行責任者(COO)兼最高財務責任者(CFO)のビクトラム・マンガルギリ氏

英国がEUから離脱する見通しとなったのは残念なニュースだ。短期的にはアジアの新興国から資金が流出するだろう。特に政治・経済が不安定なインドネシア、マレーシア、インドといった国々には短期的な利益を求める海外投資家などからの売りが膨らむとみている。投資家が安全資産である米ドル買いの動きを強めることから、アジアでは株式相場よりも通貨の下落が鮮明になるとみている。

私がより心配しているのは、米国の金融政策の変更のほうだ。世界経済が不安定なかで、FRBが追加利上げを実施すれば、投資家が運用リスクを避ける動きは強まる。歴史的な金融緩和で膨張してきたマネーの巻き戻しが起これば、アジアの新興国からの資金流出が加速するだろう。

ただ中期的には、アジアの資本・金融市場には買い戻しが入るだろう。英国がEUを離脱したとしても、他国に「離脱ドミノ」が広がり、EUが崩壊すると決まったわけではない。資産の持ち高を大きく修正する必要はないとみている。


「香港株は売り一巡後は反発も、反グローバリズムは止まらない」

香港の騰祺基金管理(資産運用会社)の沈慶洪・投資管理役員

残留派は離脱による経済的なダメージを訴えてきたが、英がEUを離れることで英・EU双方で実際にどれだけの損害を被るかは離脱してみなければ分からない面もある。長期にわたる観察が必要だろう。

株式相場に関しても、同じく見極めは難しい。例えば24日午前の香港株は離脱の可能性が高いとの報道を受けて大きく下げたが、今後もこの材料で売りが継続するとは限らない。短期的にみれば、離脱決定直後の英国株や他の欧州株は売買が減少すると予想される。その分の資金が香港を含むアジアに回流してくれば、ハンセン指数は反発もあり得る。

投票の結果が離脱にせよ残留にせよ、英国がこうした国民投票を実施しなければならなかった時点で、世界的な思想の趨勢に変わりはなかった。移民に対する拒否感、反グローバリズム台頭の流れは、今後も止まらないだろう。
〔日経QUICKニュース(NQN) 東京、ロンドン、シンガポール、香港〕
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]