日銀緩和、量から金利へ 長期金利0%に誘導

日銀の金融政策が変更となりました(※1)。「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」という金融政策ということで、量的緩和を緩和してマイナス金利を少し引き上げる様です。マイナス金利はやはり不自然であり、マーケットを歪めているという認識があるのだと思います。

結局は、金融政策だけではいくら緩和したところで、物価上昇にはつながりません。物価が上がらないのは需要不足が原因ですから、財政政策の発動が不可欠です。

経済を馬車に例えれば、金融政策は手綱に相当し、財政政策はニンジンに相当します。手綱をいくら緩めて馬を走らせようとしても、馬に走るつもりがなければ無意味です。手綱でもって馬を押すことはできませんから、どうしても馬を走らせようとするならば、大きめのニンジンをぶら下げる以外にはありません。

大きめのニンジンとは、大型補正予算であり、財源は赤字国債または建設国債(いわゆる真水)の大量発行です。これ以上借金財政を重ねて良いのか、という声が聞こえそうですが、日銀の量的緩和が失敗情勢にあるというのは、市場における国債発行高が不足しているということに起因しています。マイナス金利が導入できるのは、国債が買われ過ぎだからであり、そうでなければ金利は下がらずに高止まりしているはずです。

現状では、心配なく国債の増発は可能ですので、首都高の整備だとか、老朽化した橋梁の補修だとか、国民の資産として長期使用可能なインフラを中心に大規模に資本投下すれば良く、またそれをしないことには景気も浮揚しません。


[以下、引用]
◆(※1)日銀緩和、量から金利へ 長期金利0%に誘導
物価2%超まで緩和継続 総括検証

2016/9/21付日本経済新聞 夕刊

 日銀は21日開いた金融政策決定会合で、長短金利を誘導目標とする新しい金融緩和の枠組みを導入することを決めた。現状のマイナス金利政策を維持するとともに、10年物国債利回りを0%程度に誘導する。2%の物価安定目標が実現するまで金融緩和を続ける方針を示し、今後必要な場合には、マイナス金利の深掘りなどを軸にする考えを示した。

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日銀の異次元緩和政策は導入から3年半がたち、緩和の枠組みをこれまでの量重視から金利重視へと大きくカジを切る。日銀は金融政策の総括的な検証を実施し、物価2%の実現のためには大胆な枠組み変更が必要だと判断した。

黒田東彦総裁は午後3時半に記者会見し、決定内容などを詳しく説明する。新しい枠組みは7対2の賛成多数で導入を決めた。

新たな政策の枠組みの名称は「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」。長期金利の誘導方法はこれまでも実施してきた国債買い入れを軸とする。買い入れ額は当面、現状の80兆円程度を目標とし、残存年限にこだわらず幅広い国債を買い入れる。

日銀は利回りを指定して国債を買い入れる新たな国債買い入れに乗りだす。さらに、最長10年の資金を固定金利で供給する新しい金融調節手段も導入する。

日銀はこうした政策を、2%の物価安定目標が実現し、安定するまで続ける。これまでは2%に達する前に金融緩和の手を緩めるのではないかとの見方があったが、2%を超えるまで緩和を続けることを明確にした。

今後の追加緩和手段としては(1)マイナス金利政策の強化(2)長期金利操作目標の引き下げ(3)資産買い入れの拡大(4)資金供給量の拡大ペースの加速――を挙げた。マイナス金利の深掘りを追加緩和の軸に据える考えを初めて明確に示した。

日銀が金融政策の枠組みを変えるのは、市場に出回る国債が極端に少なくなるなか、資金供給量の拡大をこれまで通り続けていくことが難しくなっているためだ。長期金利を目標にし、資金供給量を柔軟に変えられるようにすることで、粘り強く緩和を続けられるようにする。

これまでの金融緩和は、超長期の金利が下がりすぎて保険や年金の運用が難しくなるという副作用も目立っていた。長期金利目標は、10年債金利がマイナス圏に突入するなどの金利の下がりすぎを防ぎ、金融機関に配慮するという意味合いもある。


◆(※2)日銀 新たに長期金利の目標導入 金融緩和策を強化
2016年9月21日 21時32分 NHK NEWSWEBより

日銀は、21日まで開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の導入からおよそ3年半がたっても、目標とする2%の物価上昇率が達成できないことを踏まえて金融緩和策を強化するとし、新たに長期金利が0%程度で推移するよう国債の買い入れを行う措置を導入することを決めました。

日銀は、21日まで開いた金融政策決定会合で、これまでの金融緩和策を総括的に検証し、2%の物価上昇率を達成できない理由について、企業や家計の間に根強いデフレ心理があるため、物価の上昇が続くという見方が広がらなかったためと分析しました。
日銀では、この状況の打開には時間がかかるとみて、金融緩和策を強化するため金融政策の枠組みを変更することにしました。

具体的には、まず、大規模な金融緩和を続ける期間について、これまでより長い期間にわたることを印象づけるため、「消費者物価指数が安定的に2%を超えるまで資金の供給を拡大する」としました。

そして短期金利と長期金利を目標とする新たな措置を導入し、このうち短期金利の目標は、金融機関から預かる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用するという今の「マイナス金利政策」を継続します。

一方、長期金利については、償還までの期間が10年の国債の利回りが0%程度で推移するよう、年間およそ80兆円のペースで国債の買い入れを進めていくとしています。そして、金利を目標の水準へ円滑に操作するため、日銀が市場で国債を買い入れる際に利回りを指定して買い入れる方法などをとるとしています。

今回の措置によって日銀は、長期金利の目標を下げるという追加の金融緩和が可能になったとする一方、これまでの金融緩和で長期金利までマイナスになるなど大幅に下がり、保険会社や年金の資金の運用が難しくなっていた副作用に配慮する狙いもあるものとみられます。

どのように長期金利を0%にする?

日銀は、どのようにして長期金利をゼロ%程度にコントロールするのでしょうか。日銀が打ち出した手段のひとつが市場から国債を買い入れる際に利回り=金利を指定して買い入れる方法です。

国債の市場では、国債の価格と金利は逆の動きとなり、安い国債の金利は高くなり、高い国債の金利は低くなります。
新しい方法では日銀が、「利回りゼロ%の国債を買い入れる」と市場に対してあらかじめ宣言し、ゼロ%に誘導して行きます。
例えば市場での利回りがゼロ%より高くなっている時、国債の値段は安くなっていますので、日銀はゼロ%に下がるまで安い国債をどんどん買いあげます。こうして長期金利をコントロールするというのです。
一方で利回りが下がっている場合は、日銀が国債を買い入れる量を減らして調節することもあるとしています。

総括的な検証 マイナス金利政策の副作用を指摘

日銀は金融政策決定会合で、これまでの金融緩和策を総括的に検証した結果を公表しました。

この中では、マイナス金利政策を含むこれまでの金融緩和策は、短期金利だけでなく、「超長期」の金利に至るまで金利全体を押し下げたとしています。
この結果、長い期間の金利が低下しすぎたことによって、保険や年金などの運用利回りの低下や、企業の退職給付債務の増加につながっているとしています。
こうした現象は「直接的にマクロ経済に及ぼす影響はそれほど大きくない」とする一方で、消費者心理の悪化などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性に留意する必要があると結論づけました。

また日銀は、物価目標の達成に向けて企業や家計の間に物価が上昇していくという見方が広がることが重要だと位置づけていますが、これが上昇するには、「不確実性があり時間がかかる可能性に留意する必要がある」として、今後の金融政策は、持続性があり柔軟に対応できるようにする必要があると結論付けました。
こうした検証結果を踏まえて、日銀は今回、長期金利が0%程度で推移するよう国債の買い入れを行う新たな措置を導入することを決めました。

「黒田バズーカ」から総括的な検証まで

デフレ脱却を目指して日銀の黒田総裁が、大規模な金融緩和を打ち出したのは、およそ3年半前の平成25年4月でした。
「2%」の物価上昇率を「2年程度」で達成するため、市場に供給する資金の量を「2倍」に増やすという大規模な金融緩和策は「黒田バズーカ」とも呼ばれました。記者会見で黒田総裁は「これまでとは全く次元の異なる金融緩和だ。戦力の逐次投入をせずに必要な政策をすべて講じた」と述べました。

おおかたの市場関係者の想定を超える大規模な緩和によって、金融市場では、円安と株高が進み、輸出企業を中心に企業の業績が上向きました。マイナスが続いていた消費者物価も上昇に転じました。
おととし4月には、消費税率の引き上げの影響を除いた物価上昇率は、プラス1.5%程度に達し、目標の2%に近づきました。しかし、この年の夏以降、原油価格が急落したことなどで、物価の上昇率が鈍りはじめます。

このため日銀はこの年の10月、国債の買い入れ額をさらに増やす追加緩和に打って出ました。しかし、消費増税の影響もあって個人消費は停滞が続き、消費者物価は0%前後で推移。大規模緩和の導入から「2年」がすぎても、目標の「2%」には届きませんでした。

ことしに入って新興国経済の減速などを背景に外国為替市場では、円高が進み、株価も下落。景気回復のムードに影を落とし始めます。こうした中、日銀は、ことし1月の金融政策決定会合で、新たに異例の政策を打ち出します。

日銀が金融機関から預かっている当座預金の一部について金利をマイナスにする「マイナス金利政策」です。金融機関が日銀に資金を預けておくと、「手数料」をとられてしまう状況を作り出し、企業や個人への融資を強く促すとともに、金利全般を押し下げて投資や消費を活性化しようという政策です。

この政策によって金利が大幅に低下し、個人が住宅ローンを借り換えたり、企業が社債を発行したりする動きが広がりました。その一方で、金融機関の収益悪化や、年金などの運用難といった副作用が表面化し、消費者物価もマイナス圏内から抜け出せない状況が続いています。

これ以上の金融緩和の拡大は難しいのではないかと、限界を唱える意見も出るなか、日銀の黒田総裁は「必要であれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和を行う用意がある」と繰り返し強調しました。しかし、こうした積極的な姿勢は、市場関係者の間に追加緩和への期待を呼び起こし、金融政策決定会合の日程が近づくたびに円相場や株価が不安定になりやすい状況に陥っています。

また大規模緩和が長期化していることから、今のペースで国債の買い入れを続けることができるのかという疑問の声も上がっています。
こうした中、日銀は、9月の金融政策決定会合で今の金融政策を総括的に検証し、枠組みの見直しや必要な対応を検討する方針を示していました。


◆(※3)長期金利0%手探り マイナス0.055%に低下、上昇観測乏しく
2016/9/24 2:00日本経済新聞 電子版

日銀が新しい金融緩和の枠組みを導入したことを受け、金融市場では日銀の姿勢を試す取引が広がった。長期金利をゼロ%程度に誘導することを決めたが、市場は「多少のマイナスは容認する」とみて長期金利が低下。先進国では異例の長期金利の誘導策を巡り、日銀と市場の手探りの対応が当面続きそうだ。

日銀は黒田東彦総裁の下で異次元緩和と呼ばれる大胆な金融緩和を進めてきた。これまで市場に流す資金の量を増やす政策が柱だったが、新しい枠組みでは長短の金利を調節する政策(イールドカーブ・コントロール)に転換。新たに長期金利をゼロ%に誘導する方針を打ち出した。

23日の債券市場では長期金利の指標になる新発10年物国債利回りがマイナス0.055%まで低下(価格は上昇)。21日に日銀がゼロ%誘導を決めた直後には一時、約半年ぶりにプラスに浮上したが、その後は金利が低下する展開になった。背景には「ゼロ%に近いマイナスなら日銀が容認する」(メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏)との見立てがある。

日銀は目標を量から金利に変えたが、国債を年80兆円ずつ買い増す方針は当面続ける。野村証券の美和卓氏は「緩和縮小を連想させる国債減額には動けず、金利は低下しやすい」とみる。

日銀は長期金利の低下について、当面は市場の動向を注視する。これまでの国債の大量購入で発行残高の4割超を保有しており、長期金利への影響力が強い。ただ今後も下げ止まらなければ、市場からの1回あたりの国債購入額を減らしたり、購入する国債の利回りに下限を設けたりして金利低下を抑える考えだ。

長期金利をゼロ%に近づける切り札も用意している。特定の利回りを指定して国債を買う「指し値オペ」だ。だが市場機能を軽視した制度に取られかねず、市場では「あくまで金利が急変動した場合の緊急策」(国内証券)とみている。

一方、海外投資家の影響が大きい為替市場では長期金利の誘導策が国債購入の減額をにらんだ動きとの見方も浮上した。「ステルス・テーパリング(隠れた国債購入の削減)への第一歩」。ゴールドマン・サックス証券はリポートでこう指摘。23日の東京市場では緩和縮小の思惑から金融政策決定会合前よりも円高の1ドル=100円台を中心に取引されるなど円高圧力が収まっていない。

21日に米連邦準備理事会(FRB)が利上げを緩やかなペースで進める姿勢を示したことも円高要因になっている。米大統領選を巡る不透明感もあり、市場では「今後は円が買われやすい」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)との見方が多い。

26日には黒田総裁が大阪市内で講演する。具体的な長期金利の誘導策の進め方が見えてくるのはこれからで、日銀は物価2%目標の達成に向けて長期戦の構えを示す。市場が「日銀の姿勢を見極めるまでは積極的に取引しづらい」と受け止めていることも債券・為替相場の不透明感を高める一因になっている。
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]