2018年、株価が下落する「7つの要因」とは/山崎 元

山崎元さんによる恒例の相場見通し。当室管理人ノーコメントで引用・掲載しておきます(※1)。

[以下、引用]
◆(※1)2018年、株価が下落する「7つの要因」とは

相場は上昇継続でも、そろそろ何かあるかも
山崎 元 : 経済評論家 2017年12月16日/東洋経済オンラインより抜粋

12月も中旬に入った。そろそろ、2018年の話をしても鬼は笑うまい。

まだ丸々2週間残っているので、100%とは言いがたいが、今年は投資家にとっていい年だった。昨年末の日経平均株価は1万9114円だったので、年末の株価が2万2000円だとして約15%の上昇、2万3000円だとすると約20%の上昇ということになる。

2018年は、ついに上昇相場が終わってしまう?

機関投資家が運用計画で使う国内株式の期待リターンは5%程度だから、今年は3年分から4年分程度のリターンを稼いだことになる。さて、この好調な推移が2018年も続くのだろうか。

先日、長年付き合いのあるストラテジスト氏と新年会の日程調整でメールのやり取りをしていたら、「2018年は、株価が天井をつける可能性があるので、注目している」といった趣旨の言葉が添えられていて、少々驚いた。彼は、当面の日本の企業業績を好調だと予想し、投資家から見た日本企業のガバナンス改革が進むとみていて、ここまで数年間株価に対する見通しは一貫して強気を維持してきた。

相場の世界で「天井をつける」とは、上昇相場がいったん終わることを意味する。「終わり」の判定は、文書化されたルールがあるわけではないが、だいたい前の高値から20%下落したら「ひと相場終わった」と判定されるというくらいが多くの市場参加者の認識だろう。普通の投資家にとっては、10%の下落でも相当にはらはらするもので、前の高値を遠く感じるものだが、株式市場関係者は「株価とは上昇するものだ」との希望的常識を背景に、この程度の下落は「調整」と呼ぶことが多い。

機関投資家は、株式の期待リターンを5%程度に想定する一方で、リスクはリターンの標準偏差でおおむね20%程度とする場合が多い。マイナス1標準偏差の事態が起こるとリターンはマイナス15%ということになるが、これよりも悪い事態が起こるのは全体の16%強だと考えられる。つまり、6~7年に1度だ。いわゆる「アベノミクス相場」が始まったのは、2012年に当時の民主党の野田佳彦首相が「自爆的」ともみえる解散に同意した時からだったから、そろそろ悪いほうに振れることがあってもおかしくないくらいの時間が経っている。

かのストラテジスト氏は、まだ「弱気」のレポートを書くと決めたわけではなさそうだし、書くとしてもいつ書くとも、どのような理由で書くとも決めていないようだが、「そろそろ気持ちの悪い頃合い」ではある。

ちなみに、アンソニー・ロビンズが、著名な大投資家であった故ジョン・テンプルトン卿に行ったインタビューによると、テンプルトンは彼の50数年にわたる投資経験を踏まえて「12年に2回の割合で、下落相場が主要国を襲うのが普通だ」と述べている(アンソニー・ロビンズ『世界のエリート投資家は何を見て動くのか』鈴木雅子訳、山崎元解説、三笠書房)。

株価下落の原因となりうる「7つの要因」とは?

仮に、2018年に株価が大幅に下落するような事態が起こるとして、原因になりうるのはどのような事態だろうか。考えられる要因を7つほど、リストアップしてみる。

(1)日銀の政策転換 あれば、マイナス20%級以上の大材料だ。しかし、先の総選挙で安倍晋三政権が大勝したことで、その実現可能性は大幅に後退した。2018年の日銀正副総裁人事を安倍政権で行うことになりそうな点が安心材料だ。

イールドカーブ・コントロール(長期金利のゼロ固定)や、ETF(上場投資信託)の大量購入など、部分的には弊害があると筆者は思うが、まだ物価上昇率2%の目標に遠い現在、金融緩和を後退させる行動を選択するわけにはいかないので、2018年に日銀が金融緩和の縮小に舵を切る可能性は、ほぼないと考えていいだろう。

ただし、物価上昇率が1.5%を超えて2%に近づく場面があれば、金融政策の転換が視野に入ってくるので、実際に政策が変わる前に株価の下落が先行する場面があっておかしくない。要注意の指標は消費者物価だ。

(2)安倍政権退陣 10%から20%級の株価下落材料だろう。ポスト安倍の有力候補たちはいずれも緊縮方向の経済政策を好む(官僚のレクチャーに染まった)人達だ。政治的スキャンダルや、首相の健康問題などで、安倍政権の退陣が起こる可能性はゼロではないが、今のところ小さいと見る。しかし、投資家は、安倍首相の顔色を時々チェックしておくべきだろう。

(3)1ドル=100円に迫る円高 ざっくり言って、1ドル1円の円高で日経平均は200円くらい下落するので、10%以上の株価下落材料だ。FRB(米連邦準備制度理事会)が緩やかに金利を引き上げる一方、日本では金融緩和政策が継続中で、両国の政策の差が、おそらく実力よりも10%以上は円安な現在の為替相場を作っている。大きいとは言えないが、日本の貿易黒字を米政府が問題視して、より円高な水準を求める可能性はある。

個人投資家は、全般的に「円高リスク」を過度に軽視する傾向があるように見える。今回リストアップした心配の中では、いちばん普通に起こっておかしくない事象なので、心に留めておいてほしい。

(4)ドナルド・トランプ大統領の退陣ないしは米政権の大混乱 10%程度の下落要因になるかもしれない。だが、その場合もマイク・ペンス副大統領が実権を握ることになると「普通の共和党政権」になるので、株価は戻るだろう。

(5)FRBの利上げによる米株価の下落 経験則的には、現在予想されているようなペースの利上げであれば「2018年中にはまだ危険ゾーンまで達しない」。FOMCメンバーによる2018年末のFF(フェデラル・ファンド)金利の予想値(中央値)は、2.125%だ。

前回の利上げ局面(2004〜2006年)では、利上げ幅は4%を超え、FF金利は5%台に乗った。過去の経験では、FF金利が4%を超えるくらいから金融の引き締め感が強まって、要警戒のゾーンに入る。現在のFF金利の誘導目標である1.25〜1.5%は、まだ消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利だ(11月のエネルギー・食品除くコア指数は前年比+1.7%)。

「まだ」が「もう」に変わる瞬間がいつかは訪れる

ただし、米国の株価がレベル的に高いと見られること、最終的に金融引き締めに勝つ相場はないことは、認識しておこう。「まだ」が「もう」に変わる恐怖の一瞬がいつかは訪れる。今のところ「まだ、2018年中にはないのではないか」というくらいが平均的な見方だろう。

今のところ、株価は高いとしても、前回の金融危機のような巨大な歪みが経済に溜まっている感はなく、あっても「普通の下げ相場」だろう。投資家諸氏は、2年くらい我慢すると、元の株価に戻るような状況をイメージされたい。

(6)北朝鮮と米国の武力衝突 株価は、一時的な大幅下落の後に、比較的短期間で元に戻ると予想する。「緊張が高まった状態が維持されるが、大規模な武力衝突は起こらない」というくらいが2018年最もありそうな状況だと考える。

仮に衝突が起こっても(米国の北朝鮮爆撃など)、日本の経済生産に甚大な被害が及ぶ事態は想像しにくい。衝突が起きないことを願うが、起きた場合は、「買い場探し」を考えたい。北朝鮮が「遠くの戦争」になるような外国の株式を買うのでもいい。

(7)中東の混乱 OPEC(石油輸出国機構)の減産合意が破綻する状況になり、各国が増産に走った場合、原油価格の急落(1バレル=40ドル割れ)が金融的な不安につながる可能性があり、10%級くらいの株価下落要因になる可能性があろう。

ただし、原油価格の下落自体は日本の企業・経済にとって悪くないことなので、国際金融的なリスク・オフの巻き添えで日本企業の株価が下がるとしても、この材料で株を売る必要はなかろう。

「すべてが明るく見える」のは不安だが

こうしてみてくると、あえて言うなら、「日本の金融緩和は継続され、米国の利上げ見通しでドル高・円安が維持され、世界景気がおおむね好調で、企業業績も改善傾向であり、株価は上がって当然のように思える」という、すべてが明るく見える状況であることが不安だ。

ただし、テンプルトン卿は「上昇相場は悲観主義から始まり、懐疑主義が強まるにつれて、さらに勢いを増す。楽観主義に移行する頃には成熟期を迎え、市場が陶酔に浸るときに終焉を迎える」(前掲書、186ページ)と述べたが、「まだ」現時点では、「楽観」「陶酔」といった雰囲気まではないように思う。

以上、平凡な検討で、鬼も笑う箇所がなかったかもしれないが、投資家諸氏のご幸運を祈る。
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]