中国経済、日本のバブル崩壊直前と酷似で危険水域か

ここのところ、中国における巨大企業の整理・淘汰が進行している様子が窺えます(※1)(※2)。総資産2兆元(約34兆円)で中国3位の保険会社「安邦保険集団」が一時的に国有化された報道もありましたし、それ以外にも、中国政府がバランスシートの整理・縮小を指導している大企業が複数ある様子です。

中国経済は、いよいよ本格的に、きな臭くなって来ていますが、中国政府も公的資金の大量注入と債務の株式化により腕力で凌ぐはずですので、今後の情勢がどのように展開するかは不明です。米国金利の上昇スピードを眺めながら、中国経済の動向を注視する以外にはありません。ただ、年内はまだ大丈夫と言えるように思います。


[以下、引用]
◆(※1)中国経済、日本のバブル崩壊直前と酷似で危険水域か…保険大手が政府管理下に
文=渡邉哲也/経済評論家
2018.03.07

年に一度の中国の全国人民代表大会(全人代)が3月5日に開幕した。これは日本の国会にあたるもので、中国の重要政策などが決められる。国家主席の任期撤廃を盛り込んだ憲法改正などが注目されているが、中国経済は金融リスクのコントロールが喫緊の課題であり、昨年の中国共産党全国代表大会でも、習近平国家主席が2020年までの筆頭課題に挙げている。

しかし、実態はますます混迷を深めているといえるだろう。先日には、総資産2兆元(約34兆円)で中国3位の保険会社「安邦保険集団」が一時的に国有化された。海外で買収合戦を繰り広げてきた安邦は改革開放と欧米型金融のシンボル的な存在であったが、昨年6月には、その旗振り役であった創業者で会長の呉小暉氏が中国当局に拘束され、さらに当局が銀行に安邦の商品の取り扱い禁止を命じるなど、その先行きが危ぶまれていた。

そして、中国政府は「安邦の違法な活動で同社の支払い能力が脅かされたため」という理由で、安邦の経営権を1年間は管理下に置くことを発表した。今後は、中国保険監督管理委員会を中心に中国人民銀行などが経営権を握るという。

また、同時に呉氏は会長職を解かれ詐欺罪で起訴されたことも明らかになり、衝撃を呼んでいる。呉氏はトウ小平氏の孫娘と結婚した人物で政界にも近く、そのネットワークを生かして世界的な買収を積極的に行っていた。14年には、ニューヨークの高級ホテル「ウォルドルフ・アストリア」を約20億ドル(約2130億円)で買収したことで、安邦は一躍注目を浴びた。

今後、安邦には公的資金の注入も含めた資本増強策が実施されることが濃厚だ。しかし、中国の経済誌「財新」は昨年4月の時点で「安邦のバランスシート上の損失が2兆元(約34兆円)」と報じており、経営再建のためにどれだけのコストがかかるかは不透明な状況だ。

ただでさえ、中国は国有企業の肥大化が懸念されている。昨年の党大会で、習主席は「国有企業の民営化」ではなく「民間企業の国有化」という方向の国有企業改革を進めることを明らかにした。さらに、全人代の政府活動報告で李克強首相は「(国有資本を)より強く、より優秀に、より大きくする」と語っており、国有企業の市場占有がさらに進みそうだ。

一方で、中国は過剰債務の解消も大きな課題となっており、今回の安邦の国有化もその一環といえるのだろう。

中国で流行する「理財商品」とは

中国に限らないことだが、経済成長は一定のレベルに達すると減速し、同時に銀行の金利などは低下する。そのため、中国では資産運用の手段として「理財商品」(高利回りの金融商品)の人気が高まり、その合計残高は17年の時点で52兆元(約900兆円)に上るといわれる。

当然ながら、金利が高いということはリスクも高い。理財商品も元本が保証されないものも多いが、中国の場合は国有企業が発行主体になっていることが多いため、そのリスクが正しく認識されてこなかった。理財商品を組成する銀行や保険会社が国有企業であるため、投資家は「元利払いを保証してくれるだろう」「安全なはずだ」として買っていたわけだ。

そして、理財商品の販売で大量の資金を集めた銀行や保険会社は、運用の一環として海外の資産などを買いあさった。背景には、国内の不動産価格が異常に高騰してしまったため、国外の高利回り物件を買わざるを得ないという事情もあった。しかし、高値づかみした物件が不良債権化するなど、そのマイナス面が表出しているのが実情だ。

これは安邦をはじめとする保険会社や銀行だけの問題ではなく、“財テク”に精を出してきた大企業にもいえることだ。現在、それらの企業は必死に資産売却やデレバレッジを行っているが、損失が生まれることは必至であり、継続自体が危ぶまれている企業も少なくない。

日本のバブル崩壊と同じ道をたどる中国

昨夏、中国政府は海外への資本流出を防ぐために企業の海外投資に対する融資を規制する方針を打ち出した。この煽りを食うかたちになったのが、不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)だろう。

ワンダ・グループは、16年にアメリカの映画会社「レジェンダリー・エンターテインメント」や、ヨーロッパ最大手のイギリスの映画館チェーン「オデオン・アンド・UCIシネマズ」を買収するなどして、世界最大の映画館運営会社となった。

しかし、規制強化後は資金調達に苦しみ、債務の返済資金を確保するために資産売却が相次いでいる。昨年6月にはホテルやテーマパークを合計631億8000万元(約9883億円)で売却、今年1月にもイギリス・ロンドンの不動産プロジェクトの権益60%を3560万ポンド(約54億4680万円)で売却している。

この流れは、バブル前後の日本経済と非常に似通ってはいないだろうか。かつてバブル景気を謳歌していた日本企業は、海外の企業や不動産を積極的に買収した。三菱地所がロックフェラーセンターを、当時の松下電器産業(現・パナソニック)がMCAレコードを、ソニーがコロンビア映画を手中に収めたが、結果的には投げ売りせざるを得なくなるなど、ことごとく投資に失敗している。

今の中国経済の状況は、さながらバブル末期の日本を見ているようだ。かねてささやかれていた中国のバブル崩壊が、いよいよ表面化してきたといえる。そして、このままいけばバブル崩壊後の日本で見た光景が中国で繰り返されることになるだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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◆(※2)中国、野放図な買収にメス  安邦保険を実質国家管理 金融健全化、聖域なく

2018/2/24付日本経済新聞 朝刊

【北京=原田逸策】中国政府は23日、保険を核にした複合金融グループの安邦保険集団に経営陣を送り込んで実質的な国家管理下に入れた。創業トップだった呉小暉氏も起訴した。資産を野放図に膨らませ続ける安邦を放置すれば、保険金の支払い停止などを招いて金融システムが揺らぎかねないと判断。異例の措置に踏み切った。呉氏は故・鄧小平氏の孫娘と結婚していたとされるが、習近平(シー・ジンピン)指導部は金融健全化に「聖域」がないことを示した。他の複合企業への波及は避けられない。

「春節(旧正月)休み明けの22日は必ず出勤するように」。安邦の幹部は監督当局にこう厳命されていた。正月気分が抜けない幹部に伝えられたのは当局が経営陣を送り込むことと呉氏の起訴だったようだ。

中国保険監督管理委員会(保監会)の発表によると、保監会を中心に経営陣を組織して安邦に乗り込む。期間は2019年2月までの1年間。官僚が民間企業を経営するのは社会主義の中国でも異例だ。安邦は04年の創業からわずか10年あまりで総資産2兆元(約34兆円)に急成長。国内で業界3位の生損保に加え、銀行、証券、不動産、投資会社などを持つ複合金融グループで、約4万人の従業員を抱える。

上海市人民検察院の発表では、呉氏は不正な資金集めや業務上横領で起訴された。呉氏は17年6月、当局に拘束された。呉氏は監督当局に鄧氏の孫娘との婚姻関係をちらつかせて、自社に有利な規制緩和や免許取得を実現していた。

「万能険」と呼ばれる投資性の高い保険商品で資金を大量に集め、不動産や企業など海外買収に投じた。例えば、15年にはかつて米大統領や各国元首らも宿泊した米国の名門ホテル「ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク」を20億ドル弱で買収し、名をあげた。

米シンクタンクの統計によれば、安邦の海外買収額は16年に70億ドル(約7500億円)に上り、14年比で3倍弱に膨らんでいた。海外買収を繰り返した安邦、海航集団、大連万達集団、復星集団の4大グループの買収額は16年に計350億ドル(約3兆8千億円)に達し、中国全体の2割を占めるまでになった。共産党幹部につながり、買収を装った資産の「海外移転」とも指摘された。

積み上げた海外資産の価格が急落し、安邦などの複合金融グループの経営が傾けば、保険など金融商品の支払い不能を通じて中国の金融システムは揺らぎかねない。派手な巨額買収の陰で中国の金融システムは脆弱さを増していた。

「違法な巨大金融集団は金融改革と銀行システムの安全の重大な障害。法に基づいて厳粛に処理する」。銀行監督当局トップの郭樹清氏は1月、党機関紙で今回の措置を示唆していた。

習指導部は昨春から圧力を強めた。4大グループ向け融資を制限するよう銀行を指導し、安邦や海航、万達には資産売却と借金返済を迫った。習氏は17年秋の共産党大会でも経済課題の筆頭に「債務削減」を軸にした金融の安定を掲げた。今回の措置はその手を緩めないとの宣言といえる。

さらに米国が金融引き締めにカジを切るなかで、複合金融グループの野放図な海外買収を黙認すれば、資本流出と人民元安が加速しかねないとの危機感も習指導部には強かった。中国は17年春まで海外への資本流出が止まらず、通貨防衛に追われた。習指導部はその一因が複合企業による海外買収とみていた。

安邦のように銀行、証券、保険を傘下に抱える民間の複合金融グループは30近くあるとされる。安邦には保険、銀行、証券の各当局、中国人民銀行(中央銀行)、国家外貨管理局とすべての金融監督部門が官僚を送りこんだ。郭氏は複合金融集団の規制案をまとめる方針を示しており、安邦の国家管理で得た知見を活用するとみられる。
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]