森友問題で内閣退陣なら日経平均は2000円級の下げに見舞われる・山崎元氏

財務省の文書書き換え問題について、ダイヤモンド・オンラインに山崎元さんの見解が出ていましたので、転載しておきたいと思います(※1)。

「早ければ今春にも、もしくは秋にも安倍政権が終わるとすると、いずれの場合も株価にとっては大きな悪材料だ。」ということで、財務省の文書書き換え問題の影響は、結構深刻な状況下にあります。

安倍総理は、歴代総理の中では珍しく経済政策に理解のある総理であり、以前は「日経平均連動内閣」という別名もありました。安倍総理の間は日本株は(国内要因は)平穏だと思われますが、交代するとなりますと、その他の自民党の首相候補者がいずれも経済政策に暗そうですから大変です。日経平均は撃沈される可能性もありそうです。

当室としては、既往ポジションは現状維持とし、新規資金投下は停止として、様子見とする予定です。


[以下、引用]
◆(※1)森友問題で内閣退陣なら日経平均は2000円級の下げに見舞われる
 2018年3月14日 山崎 元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員/ダイヤモンド・オンラインより

麻生太郎財務相のみならず、安倍晋三首相へも波及するかもしれない

株価はアベノミクスの継続が頼り

経済政策は、株価や為替レートのために存在するわけではない。しかし、投資家が経済政策の影響を受けるのは事実だし、経済政策の影響は、投資家の観点から見ると分かりやすい場合がある。

昨今、株価は不安定に上下しているが、ここ数年の日本の株価が、「アベノミクス」と総称される、大規模な金融緩和を中核とする政策によって上昇してきたこと、そして下支えされてきたことは間違いない。

日本経済の将来に関しては、さまざまな見方があろうが、当面の株価に限っては、アベノミクスが中断されたり、継続されたとしても何らかの理由で頓挫することがあったりすると、相当に大きな悪材料であることは、誰しも同意するところだろう。

端的に言って、ここ数年、内外の投資家は、少なくとも大規模な金融緩和政策が継続されることを頼りに日本の株式を買っていたし、現在も保有する理由になっている。

不幸中の幸いは日銀人事

ところが、昨年来くすぶってきた「森友学園」をめぐる用地買収の問題が、財務省が関わる文書改ざんの発覚という、インパクトのある形で再燃した。

本稿執筆時点では、文書改ざんの経緯などが、まだ詳しく分かっていないし、国会や世間がどのように反応するのかについても、見通すことができない。しかし、投資家としては、看過できないリスクの一つとして、この問題を評価する必要がありそうだ。

現時点で、(1)公文書の改ざんであり、財務省本省が関与していること、(2)安倍晋三首相の夫人である安倍昭恵氏の名前が元の文書にはあったこと、などが明らかになっている。改ざんのプロセスで、政治家の関与があったか否かなどは分からないものの、仮に政治家の関与が立証されなくても、安倍政権にとっては相当に大きな問題となることは間違いあるまい。

筆者は、政治分析を専門としていないが、例えば、財務省の調査終了時点で麻生太郎財務大臣が辞任し、それでも国会が収まらない場合には、予算案成立と引き換えに、安倍内閣総辞職といった展開も、可能性の一つとして見えてくる。

本省が絡む公文書の改ざんとあっては、麻生財務相の辞任は避けられまい。麻生財務相としては、自らの辞任で事態を収拾すれば、安倍首相に恩を売ることができ、後に影響力を持つことができるようになれば理想的だろうが、率直に言って、それで収まるようには思えない。

安倍首相は、かつて国会で、自らないし昭恵夫人が森友学園の用地買収問題に関与していることが明らかになれば、首相も議員も辞めると発言したこともあり、野党は辞任を求めるだろう。安倍首相が、これに反論できるとは思えないし、その状況は本人にとっても辛いだろう。

「予算案の成立と引き換えに退陣」というくらいが、ぎりぎりの「名誉ある撤退」かもしれないし、昨年の総選挙で獲得した数を頼りに延命できても、内閣支持率が低迷する公算が大きく、今年の秋に予定されている自民党総裁選での再選の確率は、小さいものになったのではないか。

株式投資家にとって不幸中の幸いは、この問題の発覚が、安倍首相が日銀の首脳人事を済ませた後であったことだ。

黒田東彦総裁の続投は、金融緩和継続のメッセージとして分かりやすいし、副総裁に就任する若田部昌澄・早稲田大学教授は、明確な金融緩和論者であり、論争にも強い「最強のリフレ派学者」と呼べる人選なので、日銀の金融緩和政策がインフレ目標の達成の手前で明確に縮小されるリスクは小さい。

ただし、日銀自体の判断でできる有効な金融緩和策は乏しい。外債の購入ができると有効だろうが、「為替操作である」との外国からの批判を回避して可能にするためには、日銀だけでなく、財務省、政治家も巻き込んだ、相当に高度な根回しが必要になる。

2019年に予定される消費増税の行方

安倍内閣が強力なまま継続しているなら、2019年に予定されている消費税率引き上げを、政治判断によって延期、ないしは凍結する可能性が期待できる。消費税率引き上げによる増税は、金融緩和政策の効果を減殺し、デフレ脱却にも株価にも大きな悪影響がある。

ちなみに、デフレ脱却を目的とする場合、純粋に経済政策としては、早くに延期を表明して国民とマーケットを安心させたいところだが、政府や日銀は「政策は現在、十分うまく行っている」とのメッセージを発したい立場でもあるので、当事者にとって、増税延期発表のタイミング選択はなかなか難しい問題だ。

さて、森友問題は、消費税に対してどのような影響を持つのだろうか。どうやら、結論が真逆の二説がありうる。

筆者は、安倍首相の後継首相が、「財政再建バイアス」を持った人になる可能性が大きいと予想するので、森友問題の影響で安倍内閣が退陣に追い込まれる場合、消費税率が予定通り引き上げられる可能性がより大きくなるのではないかと予想する。

他方、森友学園関連の文書改ざんは、財務省の大問題であり、財務省は組織の解体に追い込まれかねないし、国民の信頼を失うので、消費増税には動けなくなるとして、消費税率の引き上げが遠のくと論じる向きもあるようだ。

筆者は、経済政策の面から2019年に消費税率を引き上げない方がいいと考えるのだが、「予想」の問題としては、現時点では、森友問題は消費税が上がりやすい方向に作用するという、いわば悲観論に傾いている。

日経平均で最大2000円安くらいの悪材料か

前述のように、早ければ今春にも、もしくは秋にも安倍政権が終わるとすると、いずれの場合も株価にとっては大きな悪材料だ。

理由は、安倍首相の後の自民党総裁候補として名前が挙がる岸田文雄氏、石破茂氏、小泉進次郞氏などの有力者が、これまでの発言から判断して、いずれも安倍首相よりも財政再建優先に傾いていることだ。

現状で、アベノミクスの焦点は、金融政策から財政政策に移っている。物価を上げるためには、財政的な需要の追加が必要だし(インフラ投資などの財政出動よりは、広く消費者の手にお金が渡る減税や給付金がいい)、長期金利をほぼゼロにコントロールする日銀の政策を前提とすると、金融緩和の「量」の拡大自体が財政収支に大きく依存している。

つまり、次の首相が「財政再建」という言葉を口にした瞬間に、アベノミクスは大きく失速する。

現時点で筆者は、麻生財務相辞任はほぼ不可避で、50%程度の確率で安倍政権が今年中に終わるというくらいの材料として、今回の森友問題を評価している。

ドル・円の為替レートは、アベノミクスが順調であることを前提とし、5円から10円程度、自然な水準よりも円安に傾いていると考えられる。これが剥落するとすれば、株価に対しては日経平均でざっと2000円級の悪材料になり得るのではないだろうか。

もちろん、個人投資家の多くは、老後に備える資産形成を目的に長い期間にわたって資産を運用しているはずなので、「2000円下がるかもしれない」というリスク認識を背景に、リスク資産を売ることは適切ではないだろう。経験的に言って、一割程度の株価下落の機会に、株式をいったん売って、売値よりも安く買い戻すことは、プロでもアマでも容易ではない。

ただし、個人投資家は、現在のリスク資産保有額を点検してみて、リスク資産への投資額が過大な場合には調整を急ぐべきだろうし、レバレッジを掛けた運用をしている投資家などは、通常時以上にリスクに注意するべきだろう。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]