「波乱相場」に個人投資家はどう対応すればいいのか・・山崎元氏

3月28日付けのダイヤモンド・オンラインに掲載されていました山崎元さんのコラムは、先日の当室のぼやきに対する元気付けのような内容でした(※1)。

山崎氏いわく:

・まずは、自分の資産の時価把握→評価損益は気にしなくていい→材料を気にしても、案外仕方がない→結論は、「何もしなくていい」となる場合が多い。

・株価が下がるには、下がるだけの理由があるはずなので、「前よりも安く買えるから、有利だ」と考えることが常に正しいわけではないが、リスク資産を積み増した方がいい投資家の場合、以前よりも安値で買える心理的な有利感を利用することは、悪いことではないだろう。

・投資家は、米国の金融政策や貿易政策の将来をうまく予想して投資行動を考えようと思っても、案外うまく行かないことが多いだろう。

・経済の予測や分析が常に全く無駄だとは言わないが、多くの場合、個人投資家だけでなく、投資家一般が取ることのできる最善の投資行動は、市場の価格形成の際にリスクを負担するに足るリターンが織り込まれていることを期待して、適切な量のリスクを持ち続けることだ。
 
 ・・・ということの様です。

個別株については当面現状維持、投信についてはナンピン買いということで、チャートを眺めながら微速前進とします。


[以下、引用]
◆(※1)「波乱相場」に個人投資家はどう対応すればいいのか
2018年3月28日 山崎 元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究
ダイヤモンド・オンラインより

まずは、自分の資産の時価把握

ここ2ヵ月ほど、内外の株価が大きく変動している。3月の第4週(3月19〜23日)では、日経平均が1000円以上下落したし、NYダウも1400ドルほど下落した。

今年の初めごろまでの数ヵ月、特に米国では、金利は上昇しつつあるものの、景気が悪くない状況を背景に、株価の変動は小さく、しかも徐々に切り上がる、投資家にとって快適な状態が続いていたために、「適温相場」などという言葉で表現されていた。

日本の株価形成には、海外投資家の影響力が大きいこともあり、日本の株式市場もまた投資家にとって「適温」と言いたくなるような、順調な上昇相場を形成していた。

しかし、経験的に言って、株式市場は「適温」の状況がずっと続くような“大人しい生き物”ではない。昨今程度の波乱は、十分、日常的に起こり得るものだ。近年、積立投資などで新たに投資を始めた投資家も少なくないだろうが、株価の急落を受け、落ち着かない思いの方がいらっしゃるのではないか。

個別の株式や、投資信託などに投資している投資家が、株価の急落を受けて、第一に行うべきことは、自分の資産の現状を正確に把握することだ。端的に言って、保有資産の時価評価から目をそらさないことが大切だ。

個人投資家に対して、「資産の時価を見ると、つい売りたくなるので、時価は見ない方がいい」といったアドバイスを送る向きもあるが、筆者は現実をよく見る方がいいと思う。

「リスクを感じつつも、必要な投資は維持する」という判断と、行動ができるようになって初めて一人前の投資家だ。自分の心の“どきどき具合”を自分で観察するというくらいの余裕を持てると理想的だ。

なお、株式や投資信託に対する「投資」の場合、自分が持っているお金を資本として企業に提供して、経済価値を稼ぐことが本質なので、投資ポジションを持ち続けることに意味がある。もともとのリスク量が適当だったのであれば、保有資産を売って損失、あるいは利益を確定しなければならないケースはごく少ない。

これに対して、例えばFX(外国為替証拠金取引)のようなゼロサムゲーム構造の「投機」のリスクを取っている場合は、スクエアポジション(売り持ちも、買い持ちもない状態)が基本なので、「状況が分からない」と思った場合には、速やかにポジションを閉じることが肝心だ。

評価損益は気にしなくていい

以下、「投資」の場合について話を続けよう。

前記のように、自分が持っている株式や投資信託の時価を直視することは重要だが、自分の買い値と現在の価格を比較して、「評価損益」を計算する必要はない。

この点は意外かもしれないが、過去の自分の買い値は、将来の株価の動きに全く関係ないので、無視していいのだ。

一般論で言うと、例えば、1000円の株価で株式を買った場合、株価が900円に下がると、何とかして1000円に戻ってほしいと強く願って「1000円に戻るまで売りたくない」と思いがちだ。他方、1000円で買って大幅に儲かっていた株式が1050円まで下がってくると、「1000円を割らないうちに売ってしまいたい」とリスクが急に気になるような心境になることが多い。

自分の買い値を気にすると、リスクに対する態度が揺れてしまい、不適切な行動を取る可能性が高まりやすい。投資を、自分の買い値を介した「勝ち負け」で捉えないことが重要だ。

厳密には、税金との関係で損益が関連してくる場合があるが、運用の意思決定にあっては、自分の買い値と比べた損益は余計な要素だ。

「そう言われても、やっぱり気になる」というのが、大多数の方の正直な感情ではあろうと思うが、その心理を敢えて突き放すことができると素晴らしい(プロの運用者としてスカウトしたいぐらいのものだ!)。

この点を考えると、積立で投資を行うと、自分の買い値を計算することが面倒なので、買い値が気になりにくいという心理的なメリットがある。

リスクの大きさを再点検

さて、積み立てで投資を行ったとしても、自分が既に買ってしまった「持っている資産」に関するリスクは減らない。

株価の急落で、否応なく「リスク」を感じるようになったその時に、個人は、今、持っているリスク資産の投資額が、適切なのか否かを改めて点検してみることが必要だ。

例えば、内外の株式に広く分散投資するような投資信託でリスクを取っている場合(筆者は、外国株式6割、国内株式4割の割合でインデックスファンドを保有する方法を勧めている)、まず「1年後に、現在のリスク資産保有額の3分の1を失っても大丈夫か?」と考え、次に「リスク資産は、1年後に平均5%くらい増えると期待できる」と考えて、適切なリスク資産保有額を決めるといい。

個別の株式でリスクを取っている場合であれば、リスク資産保有額の3分の2くらいの損失は十分想定しなければならないし、数銘柄で上手に分散投資している場合でも、2分の1くらいの損のリスクは想定しなければならないだろう。分散投資は重要だ。

リスクについての点検は、あくまでも「現状の資産価格」から出発して、損失の可能性とリターンの期待を考えることが重要だ。

「今年は、株価が10%下がった。1年に3分の1下がるのが最悪のケースなのだとすると、あと23%程度しか下がらないはずだ」という具合に考えてはいけない。「現状から3分の1下がっても大丈夫か?」と自問しなければならない。

株価の急落の後に、自分にとって最適なリスク資産の保有額を考えると、リスクの側だけが気になってしまうかもしれないが、改めて自己点検してみた結果、自分にとっては、もっと大きな金額のリスク資産投資を持つことが最適だという結論が出る場合もあるはずだ。

株価が下がるには、下がるだけの理由があるはずなので、「前よりも安く買えるから、有利だ」と考えることが常に正しいわけではないが、リスク資産を積み増した方がいい投資家の場合、以前よりも安値で買える心理的な有利感を利用することは、悪いことではないだろう。

材料を気にしても、案外仕方がない

さて、報道を見ると、ここ一連の株価の下落は、一つには米国の金融政策が引き締めに向かっていて、米国の金利が(特に長期金利が)上昇していること、もう一つには米国のトランプ大統領が保護主義的な貿易政策に動きつつあることが、経済に悪影響を与えているとの懸念があるようだ。

こうした見方は、多分大きく外れていないのだろうが、投資家は、米国の金融政策や貿易政策の将来をうまく予想して投資行動を考えようと思っても、案外うまく行かないことが多いだろう。

それは、現在の株価には、現時点で分かっている将来の懸念が既に相当程度反映しているからであり、将来にならなければ分からないことは、誰にとっても分かりにくいことだからだ。

経済の予測や分析が常に全く無駄だとは言わないが、多くの場合、個人投資家だけでなく、投資家一般が取ることのできる最善の投資行動は、市場の価格形成の際にリスクを負担するに足るリターンが織り込まれていることを期待して、適切な量のリスクを持ち続けることだ。

現状認識と自己点検は大切だが、もともと適切な大きさのリスクを持っていたのであれば、投資家が取るべき行動の結論は、「何もしなくていい」となる場合が多い。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
[以上引用 マクロ経済動向と資産運用形成 研究室]